『JR東日本カップ2019 第93回関東大学サッカーリーグ戦【前期】』1部リーグ第4節は、5月2日(木・祝)に5試合、5月3日(金・祝)に1試合行われた。
早稲田大学 対 専修大学 @三ツ沢公園陸上競技場
開幕から未だ勝ちがなく、試練の続く前年度王者・早稲田大学(勝点1・9位)と、開幕3戦で9失点を喫するなど低空飛行が続く専修大学(勝点1・11位)の一戦。
両チーム共に勝点1で並ぶ下位対決。下位争いから抜け出すためにも勝点3が欲しい両チームの対戦は、試合序盤から早大がペースをつかみ、左ウィングのルーキー33番・西堂久俊を中心とした攻撃で専大ゴールに迫る。しかし、専大もGKの1番・桐林海生が好守備で得点を許さず、次第に攻勢に出るように。ボールを支配しる早大と、カウンターで応戦する専大。試合はゴール前の攻防や主導権がめまぐるしく変わる展開となった。すると20分、専大は9番・岸晃司がゴール前で相手GKのパスミスを奪うと、13番・鈴木厚太へとパス。13番・鈴木はこれをゴール左隅に冷静に流し込み、一瞬の隙をついた専大が先制する。
後半も一進一退の攻防が続き、早大は9番・武田太一や33番・西堂を中心にサイド攻撃から活路を見出す。一方の専大は7番・岡本勇輝や8番・河上将平、9番・岸を中心に試合を組み立てて追加点を狙う。やがて早大が個の突破力を活かしてペースを握り、59分にはペナルティーエリア内で相手のファールを誘い、ペナルティーキックを獲得。キッカーは9番・武田。しかしゴール左を狙ったシュートは、無情にも専大のGK1番・桐林に右手1本でストップされてしまう。同点に追いつく千載一遇のチャンスを逃した早大には徐々に焦りの色が。そんな早大に対し、専大はカウンターからゴールを狙う。86分、ハーフウェーラインでパスを受けた11番・中杉雄貴がそのままピッチ中央をドリブルで突破。ペナルティーエリア前まで持ち込み右足を振り抜くと、これがゴール左に突き刺さり、専大が試合を決定づける追加点。試合は2-0で終了。専大にとっては嬉しい今季初勝利となった。一方、前年度覇者・早大は未勝利の状況が続き、下位争いから抜け出せないままとなった。
筑波大学 対 明治大学 @柏の葉公園総合競技場
勝点2差で明治大学を追う筑波大学(勝点7・2位)と、開幕から3連勝中で、首位を譲るわけにはいかない明治大学(勝点9・1位)の一戦。
1位と2位の首位攻防戦は前半開始直後に動いた。5分、筑波大は19番・加藤匠人からのアーリークロスを9番・犬飼翔洋が頭で上手く合わせて先制点を決める。その後は両者譲らず拮抗した状態が続き、明大左サイドの8番・森下龍矢と筑波大の14番・山原怜音の「全日本大学選抜」同士がマッチアップ。白熱した戦いが展開された。17分には筑波大の7番・三笘薫が左サイドを突破。それを止めようとした明大4番・川上優樹が後ろから7番・三笘を倒し、筑波大にペナルティーキックを献上してしまう。このペナルティーキックを、7番・三笘自身が冷静に決めて筑波大が追加点。2-0とリードを広げる。しかしその後は明大が主導権を握り、ボランチの31番・安部柊斗、6番・瀬古樹が中盤を支配。筑波大は7番・三笘を中心にカウンターからの追加点を狙うものの、明大のセンターバック、12番・常本佳吾がゴール前に立ちはだかり、追加点を許さない。一方の明大は10番・小柏剛が前線で躍動、コーナーキックだけで7本のチャンスを得るが、得点につなげられず前半は終了した。
後半も運動量で勝る明大がセカンドボールを拾い続け、波状攻撃を展開。ペースで進み、71分には途中出場の20番・佐藤凌我が中央の17番・持井響太にパス。すると17番・持井が、筑波大のディフェンスラインの裏へと抜けた10番・小柏にラストパスを出し、そのまま10番・小柏が筑波大のGK・30番・阿部航斗の股下を抜くシュートで筑波大から1点を奪う。その後も明大が果敢に攻めるが、筑波大も28番・森侑里、14番・山原怜音、GK30番・阿部が体を張った守りでゴールを死守し、試合は2-1のままタイムアップ。筑波大が接戦をものにし、首位を奪還した。90分間繰り広げられた熱戦に、会場は試合後も興奮冷めやらぬ様子。敗れた明大の選手たちは倒れ込み、勝利した筑波大の選手は拳を掲げるなど、"首位攻防戦"らしい白熱した試合となった。
法政大学 対 桐蔭横浜大学 @相模原ギオンスタジアム
上位に食い込むためにも、何としても勝点3が欲しい法政大学(勝点6・5位)と、未だ勝利なし、ここで勝利して流れに乗りたい桐蔭横浜大学(勝点2・8位)の一戦。
試合は開始直後から桐蔭大が主導権を握る展開に。9分には法大DFのクリアボールを拾った桐蔭大の14番・篠原友哉がボールを収め、そのまま右足でシュート。これが決まり、桐蔭大が先制する。さらに桐蔭大は22分、8番・イサカゼイン、11番・下村司とパスをつなぎ、最後は11番・下村からの浮き球を9番・滝沢昂司が頭で決めて追加点。スコアを2-0とする。対する法大は、18番・上田綺世、8番・紺野和也を中心にゴールに迫るが、桐蔭大もキャプテンの4番・眞鍋旭輝を中心としたディフェンス陣がこれを跳ね返し、得点を決めることができない。
後半、最初にチャンスを作ったのは法大だった。57分、8番・紺野がカットインからの強烈なミドルシュートを放ち、桐蔭大に1点差へと迫る。同点に追いつきたい法大は、18番・上田が積極的にシュートを放つが、桐蔭大のGK、21番・早坂勇希がゴール前に立ちはだかりゴールならず。法大に最後まで同点ゴールは生まれず、試合は1-2のまま終了。桐蔭大がついに今季初勝利を収めた。
駒澤大学 対 東洋大学 @埼玉スタジアム2002第2グラウンド
開幕戦の大敗から立ち直りつつある駒澤大学(勝点4・7位)と、開幕から無得点・未勝利と厳しい状況にある東洋大学(勝点0・12位)の一戦。
試合序盤にペースを握ったのは東洋大だった。細かくパスをつないで中盤を支配すると、9番・荒川勇気、11番・小林拓夢の2トップが裏に抜け出してシュートチャンスを作る。東洋大は30分、6番・坪川潤之のパスを受けた10番・松崎快がペナルティーエリアに浮き玉を上げると、それに反応した11番・小林がボールを収め左足でゴールへと流し込む。東洋大が待望の今季初得点を挙げて先制。しかし駒大もすかさず反撃を開始する。36分、19番・森本ヒマンが東洋大陣内でボールを奪取し、左サイドへと展開。ボールを受けた24番・米田泰盛が落ち着いて、右足でゴールに流し込み、駒大が同点に追いつく。
1-1のスコアで振り出しに戻った後半は、駒大が得意とする縦に速い攻撃で、東洋大を押し込む展開に。すると63分、駒大は19番・森本がボールをキープし、24番・米田、7番・荒木駿太へと繋ぐ。7番・荒木が角度のないところからシュートを放つと、これが東洋大のオウンゴールを誘い、駒大が逆転に成功する。同点に追いつきたい東洋大だったが、駒大の力強い攻撃に押し込まれ、後半は、シュートを1本も打てずにタイムアップ。2-1で逆転勝利を収めた駒大が勝点3を獲得。一方の東洋大は初得点を挙げたものの、開幕4連敗となった。
順天堂大学 対 立正大学 @浦安市運動公園陸上競技場
前節、今季初黒星を喫した順天堂大学(勝点6・5位)と、1部リーグ初参戦ながら現在2勝と白星先行の立正大学(勝点6・4位)の一戦。
同じ勝点6で並ぶチームの対戦は、序盤から立正大がハイプレスで勢いよく攻め込む展開となった。試合が動いたのは14分。立正大は右サイドで18番・平松昇が突破、そこからパスを受けた3番・鈴木康孝がゴール前にクロスを上げる。このクロスに10番・人見拓哉が右足で合わせ、立正大が幸先のいいスタートを切った。対する順大は28番・安島樹が中盤の底から長短のパスを前線に供給しチャンスを作るも、エースの10番・旗手怜央が厳しいマークにあい、なかなか決定機を作ることができない。
0-1と立正大リードで迎えた後半だったが、今度は立ち上がりから順大がボールを支配。16番・長倉幹樹、28番・安島、途中出場の26番・寺山翼の3人がテンポよくボールを動かし、そこに10番・旗手が上手く絡みながら攻撃を活性化。18番・大森真吾の惜しいシュートも見られ、得点を予感させた。しかし一瞬のチャンスを見逃さなかったのは立正大。62分、右サイドでボールを奪うと、そこからショートカウンター。最後は10番・人見がGKとの1対1をかわして決め、順大を突き放した。さらに76分には、11番・見原慧が右サイドからカットイン。ゴール前にクロスを上げると、これを防ごうとした順大DFがハンドを犯してペナルティーキックを献上することに。もちろんキッカーは10番・人見。冷静にキックを沈めて3点目を決め、前節に続く2試合連続のハットトリックを達成した。その後は順大が猛攻を仕掛けるも、立正大が守りきり試合終了。立正大が2連勝を飾り、3位に浮上した。
2試合連続完封勝利の立正大・杉田守監督は「前節の専修大学戦の教訓が生きた」とコメント。0-4と快勝した前節だが「ボールを動かすというより受けてしまった」との反省があったという。しかし、この試合では「積極的にボールを動かそうという意志が、試合の立ち上がりに出ていた」と笑顔。「順大さんはうまいのでなかなかボールを奪えない時間帯もあったが、一生懸命ゴール前を固めて失点をしなかったのは大きい」と守備陣の奮起も評価した。「開幕戦のイメージとは違い、想像以上に勝点をとる厳しさを感じている」という杉田監督だが、「関東リーグという場に育てられて成長している」との手応えも実感しているという。「たとえば球際の厳しさなどは、東京都リーグではそこまで厳しくしなくても勝ててしまう。それが関東リーグでは相当厳しくしなければ勝てない、と選手たちが自身で気づくようになった」とコメント。そうしたことが、1部での躍進にも結びついている。次の対戦相手は「新人戦の準決勝でPK戦負けした」桐蔭横浜大学。「当時の選手が今の3、4年生。リベンジもあるが、まずはしっかりコンディションを整えて準備して臨みたい」。
流通経済大学 対 中央大学 @龍ケ崎市陸上競技場たつのこフィールド
いまだ勝利のない流通経済大学(勝点1・10位)と、現在無敗で首位を狙う中央大学(勝点7・3位)の一戦。
前半は3バックで臨んだ流経大がボールの主導権を握り、試合を支配する。19分、流経大にチャンス到来。7番・菊地泰智のフリーキックから13番・伊藤敦樹がゴールを決め、流経大が先制する。試合はその後も流経大ペースとなり、「流経大のパス回しに中途半端なプレーしかできず、ボールのとりどころがなかった」(中央大・10番・加藤陸次樹)という中大は攻撃らしい攻撃の形を作ることができない。セカンドボールも流経大が支配し、状況は圧倒的に流経大が優位に。流経大が1点をリードしまま前半を終了する。
後半は球際の攻防の激しい、攻守の切り替えが早く強度の高いゲームとなった。中大は次第にセカンドボールをキープ。サイドバックの攻め上がりも増えて、攻撃に厚みが出始める。すると64分、10番・加藤が28番・荒木遼太からの浮き玉をうまく収めると、右足でシュート。「ファーストタッチがうまくいったし、前節のゴールより決めるタイミングが早かった」(10番・加藤)。中大が同点に追いつく。このゴールで勢いを取り戻した中大は一気に流経大を攻め立てると、79分にコーナーキックを獲得。8番・大久保智明の右からのキックに、交代したばかりの31番・上村尚輝が頭で押し込み中大が逆転に成功。後半に底力を見せた中大がリードを守り切り、1-2で勝利。勝点3を獲得し中大は2位に浮上。一方の流経大の初勝利はまたもやお預けとなった。
前半と後半で真逆の展開となったこの試合。「前半に失点して負けている状態だったので、後半は前からボールを取りに行く、というスタンスをチームで共有した。そのため中盤の7番・宮城和也と13番・縄靖也を前に出した」(10番・加藤)との策が功を奏し、後半に主導権を取り返した中大。佐藤健監督は「そろそろ研究されてくるころ」と警戒していたが、そこから柔軟に対応できる実力を見せつけた。一方、「成績や結果に関係なく、中大戦から3バックにすることは決めていた」というのは流経大の中野雄二監督。「中大の10番・加藤、法政大学の18番・上田綺世といったパワーのあるFWとの対戦が続くので、3バックにして人数を同じにするか、または1枚余裕を持たせる形で制圧しようと思った」という。その試みは前半に限っていえば成功し、中盤もこれ以上ないくらい機能したが「正直、前半にあれだけのことができたのに、後半蹴り出してしまったのがわからない」と首をひねる。若い選手が多く出場しているだけに「今日の逆転負けは痛い」と正直な気持ちを吐露しつつ「収穫がないわけではない。あとは1点目も2点目もミスからの失点なので、そこをどう修正できるか。複数失点が続いているので、ボールの失い方に気をつけないと」と次節に意識を向けた。
第4節では開幕から唯一3連勝の明大が、こちらは開幕から負けなしの筑波大と対戦。結果明大が1-2で敗れ、ついに連勝がストップし全勝チームが消滅した。一方で1部から昇格した2チームのうち立正大学はエースの10番・人見拓哉が2戦連続となるハットトリックで、順大に3-0で勝利。また、中大は流経大に2-1で逆転勝利を収め、開幕から未だ負けなしとなっている。一方で昨季王者の早大は、開幕から未だ勝利なしと苦しい展開。今季も1部リーグは混戦模様となっている。