2021年関東大学サッカーリーグ戦1部参入プレーオフ

拓殖大学(1部10位)

東京学芸大学(2部3位)

1996年度 入れ替え戦
東京学芸大学(2部8位) 1(0-0)0 拓殖大学(関東大会1位)


 2003年以来、18年ぶりに復活した入れ替え戦(1部・2部参入プレーオフ)。過去の試合では、多くのチームが喜び、そして肩を落として涙を流してきた。11月27日に、1部への昇格、そして残留を懸けて戦う拓殖大学と東京学芸大学もまた、そんな過去をもつチームだ。このコーナーでは、そんな両大学の知られざる過去を紹介しよう。



 過去、何度となく入れ替え戦に出場してきた両チームだが、入れ替え戦で直接対戦したのは一度きり。1996年、東京都1部リーグ所属の拓大が関東2部リーグ昇格を懸け、そして東学大は2部リーグ残留のために相まみえた。立場的にいえば、今大会の対戦と逆ということになる。

 立場も違えば、チームの特徴も今とは違った。当時の東学大の二つ名は【2部の門番】。2部リーグの下位が定位置で、入れ替え戦には毎年のように出場していたが、決して負けることはない。都県リーグのチームにとっては、実にやっかいな相手だった。東学大は前年度こそ4位で入れ替え戦を免れたが、1996年度のリーグ戦では、わずか1勝しか挙げられず最下位に。その結果、関東大会1位の拓大と対戦することとなった。

 一方の拓大は、関東大会の常連校。しかし過去3年間は関東大会で敗れ入れ替え戦に出場できなかった。この年は東京都で優勝した勢いで関東大会でも優勝。満を持して4年ぶりとなる入れ替え戦に臨んだ。

 25年前も、そして現在も拓大を率いる玉井朗監督は、「あの試合のことは、とてもよく覚えている」と振り返る。拓大は今も、そして当時も攻撃的な選手の技術の高さが特徴。当時の主将、中森大介は都リーグ所属ながら関東選抜に選ばれるなどその実力を評価されており、チームの中心として拓大の攻撃を牽引した。

 しかし【2部の門番】の壁は、堅く厚かった。東京都リーグでは的確なパスワークで6戦全勝と、圧倒的な強さを見せた拓大だったが東学大の体を張った守備に苦しめられ、前線にパスが通らない。

 それでも前半は五分五分の展開だったが、後半は東学大が鮮やかなカウンターから拓大ゴールを脅かす場面も。「とにかく最後まで点の入らない試合」(拓大・玉井監督)、まさに我慢比べといった様相を呈してきた。

 当時の入れ替え戦は、引き分けの場合“再試合”となり、2試合目でも引き分けとなった場合はそれぞれのリーグに残留ということになっていた(※今年度の1部参入プレーオフは1試合のみ、引き分けの場合はそれぞれのリーグに残留)。残りわずかとなった段階で、拓大の選手には再試合のこともちらりと頭に浮かんだのかもしれない。

 だが、そのスキを逃す東学大ではなかった。89分、東学大は拓大のファウルをさそいペナルティーエリア右横の絶好の位置でフリーキックを獲得。2年後には、東学大の1部リーグ昇格の立て役者となる、5番・中村彰吾の蹴り入れたキックを頭でつなぎ、最後は10番・杉田政博が右足で突き刺す。

 終了間際に東学大が値千金のゴールを挙げ、ほどなくして試合は終了。拓大は東学大のゴールを最後まで割ることができず、13年ぶりの関東リーグ昇格の望みは潰えた。拓大が関東リーグに戻ってくるのは9年後、2005年を待たなければならない。


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