関東大学サッカーリーグ戦では、実に18年ぶりに開催される上位カテゴリーと下位カテゴリーの、いわゆる『入れ替え戦』。両チーム特別な緊張感をもって臨む特別な一戦は、強い風の下でキックオフを迎えた。


立ち上がりから積極的な攻撃を見せたのは、風下の東京学芸大学だった。開始早々の2分には左サイドを崩し、21番・柿本音王がゴール前に入り込む。これは拓大GK、12番・高麗稜太を中心とする拓大の守備陣が必死にブロックするが、「試合前までは自信があった」(玉井朗監督)という拓大に冷水を浴びせかけるのに十分なプレー。「(拓大との)相性はいいと思っていた。奪ってカウンターを仕掛けやすい」(東学大・星貴洋監督)という狙いどおり、東学大は続く5分にも右サイドから切り込んだ5番・武沢一翔がシュートを放つ。これは惜しくもクロスバーを叩いたものの、拓大に「ひょっとしたら危ない」(同監督)と思わせるシーンが続いた。
しかし「入れ替え戦ということで堅くなっていたのか、考えられないような凡ミス」を連発していた拓大だが、次第にボールを落ち着かせると反撃を開始。30分過ぎには右サイドから切り崩し、何度となくチャンスを演出する。すると36分、拓大は再び右サイドから攻撃を仕掛けると、19番・関根大輝から11番・加賀美右京にパスを送る。11番・加賀美は相手DFに囲まれながらもボールをキープし、ゴール前に抜け出した9番・山中麗央にボールを送る。東学大のマークを振り切った9番・山中がこれを左足で流し込み、拓大が先制点を挙げる。
1-0の拓大リードで迎えた後半は、勝たなければ昇格のない東学大が攻勢を強める。後半は攻撃に優位な風上に立ったこともあり、9番・後藤健太、10番・鈴木魁人、11番・河田稜太ら前線の選手が入れ替わり立ち替わり攻め上がってはゴールを狙う。だが、引き分けでも1部リーグ残留となる拓大は、時間が経つにつれて守備を固める。東学大はセットプレーも多く獲得し、守備も含めた総力戦でゴールを狙うが、拓大の堅固な守備を最後までこじあけることが叶わず1-0でタイムアップ。
1-0のまま試合は終了し、拓大が25年前の入れ替え戦での雪辱を果たすとともに、1部リーグへの残留を決めた。
「タイムアップの笛が鳴るまで不安な気持ちで試合を見ていた」という拓大の玉井監督は「運にも助けられた」とポツリ。失点してもおかしくないシーンが多々あり「あそこでやられていたら、結果は逆になっていた。東学大は前の選手の個の力が強かった」と東学大の強さを評するとともに、参入プレーオフの難しさをにじませた。この試合には、主力選手のひとりである2番・長峰祐斗が内定先のツエーゲン金沢から戻れず、万全の体制とは言い難い状況で臨むことになった。それでも、キーマンとして期待を寄せていた11番・加賀美のお膳立てで、エースの9番・山中が決勝点を決めるなど「いつもの形で点が取れた」(同監督)。後期は下級生も台頭し、この試合でも1年生、2年生がスタメンで活躍するなど来季に向けて貴重な経験を積むことができた。それを糧に「来年は入れ替え戦に出ることのないよう、また降格することもないよう、今年以上にがんばりたい」と玉井監督は語った。
一方、最後までゴールを割ることができず、試合が終わってもなお悔しさをにじませた東学大・星監督。「風下だった前半はうまくいったが、逆に風上の後半はボールが流れてしまってシュートが入らなかった」と試合を振り返り「今週はシュート練習をしていなかった。それは自分の責任」とうなだれた。昨年度は都リーグで戦う憂き目にもあったが、「本来なら(1部への)昇格争いができるチーム」と評価。その言葉どおり、今季は復帰初年度で1部への切符を手に入れたが、あと一歩が届かなかった。この試合に臨んだチームの主力選手は、ほとんどが1年次から試合に4年生。それだけに「来季はまったく別のチームになる。そういう意味では苦しいシーズンになるかもしれない」と、早くも来季に思いをはせた。